アメリカへ

まことに恥ずかしながら、日本を発つときはいつもドタバタである。特に午前便なら、完全徹夜するしかない。途中で朦朧とする時間帯もあるのだが、寝過ごすのが怖いから、そういう選択になる。

先延ばしは許されない。不在中の締め切りごとを前倒しでこなし、渡航先で起こりうることを想定しての準備。前日までに出しそびれた宅急便は、ホテルまで持ち込んで、リムジンに乗る前にベルボーイに託す。これも、よくあるパタンだ。

最近はどこの国でも気温差が激しく、厳寒対策も必要だ。イヤーマッフルとスキー用のネックウォーマーを詰め、13年前に買ったイッセイミヤケのロングダウンを久々に着ることにした。機内では布団なみの威力を発揮する。念のため暖かい日対策として、通販で購入した膝下丈のウルトラライトダウンをスーツケースに入れた。小さくまとまるので、ありがたい。

そしてこの季節、なにより力を発揮するのはレッグウォーマーである(写真、ボタンはハート型)。新幹線も含め、機内で足元を温めるのに有効なのだ。それに、寒かったときにはブーツの代わりにもなる。アメリカでは荷物チェックの際に靴を脱がされるので、ブーツは履かない。後ろで待っている人に迷惑がかかるからだ。機内では確実にむくむので、タイトな靴も履かない。脱ぎ履きが簡単なミュールを履き、レッグウォーマーを持ち歩くことで、ブーツと同じ暖がとれるというわけだ。 

そんな調子だからリムジンの中では、もちろん爆睡だ。気づいたら、パスポートチェックのアナウンス。もう空港はそこに見えている。

今回はANAでNYに飛び、アムトラックでワシントンDCに移動。帰りはダレス空港からという段取りである。本来は正月早々、優雅に飛びたつつもりだったのに、尾てい骨を打ったために、下旬になってしまった。

特筆すべきはスターアライアンス・ゴールドの資格もこの旅で失うということだ。地球の怒りを感じた私は、東日本大震災を機に、以前ほど縦横無尽に飛び回ることがなくなっていた。結果、マイレージが5万マイルに達せず、1月末をもって、ゴールドステイタスでなくなるのだ。エコノミーの分際でビジネスラウンジにて過ごす特権も、荷物の優先権も失う。貧富の差が露骨なフライト社会で、貧民にカテゴライズされるのである。