洪水被害のシミュレーション

洪水被害を伝えるテレビのニュースを見ていて腹立たしいのは、現場に行ったあと、スタジオで「経験したことのない」被害に対して「信じられない」というリアクションをすること。そして、異常気象の原因を気象予報士に分析させている終わることだ。

311以降、あのクラスの津波や洪水がいつでもどこでも起き得ると私は強調してきた。アジアやヨーロッパの洪水が報じられるたび、他人事ではないとツイートした。テレビが伝えるべきは、東北以外の地域でも同じことが起きたときに備え、いま私たちが何をすればいいかである。数年先ではない。明日、起きるかもしれない前提で。

大切な物を2階に上げるくらいの助言はコメンテーターにも可能である。だが、家が浸水したときの修繕は、素人にはできない技だ。実際に被害にあったら、自治体の土木担当者が被害者全員をすぐに救うことはできないのである。ならば、日ごろから知人の伝で建築関係者にコネを作るとかの準備も必要だろう。

昨年、宇治で妻の実家が被害にあった人は、自治体の対応の遅さを嘆いていた。彼が建築家なので、義父母は助けられても、地域全体までは彼の手に負えなかったという。もっとも、補助金のことを考えれば、自力で修繕できた人は不利になる。いつまでも暮らせない状態を我慢して補助金を得るか、自力で直して早々に快適な暮らしを手に入れるかは、悩みどころだろう。

そうした被災地の経験をレポートして、事前にできる対策を伝えることこそテレビの役割と私は考える。