父の命日

昨日は父の命日。少し遅くなったので、霊園に向かうのに、生田駅を降りてからタクシーに乗った。
「こんな雨の日に、立派ですね」
ドライバーが言う。
七回忌の法要は一週間前に終えていたが、命日には墓参をすると決めている。遺族にとっては当たり前の墓参の風景が、いまの日本では日常の営みから消えているということだろう。
1月に息を引き取った母と違って、3月は花屋の店頭に春の花がたくさん並ぶ。せっかくだから、菊などの仏花ではなく、ヒヤシンスだの水仙だの、香しい花を供えることにしている。外苑西通り沿いの、10本単位だからリーズナブルの花屋で色々みつくろい、残りは遺影の前に生けた。
色使いが、欧州のウインドウを彩るキリスト教の復活祭のよう。
缶ビールを供えて父に語りかけていたら、急に寒くなった。予報によれば、翌日は雪とのこと。風が冷たくて、雑巾を洗う手がかじかんだ。
今日になってみると、雪ではなく、冷たい雨。水仙もヒヤシンスも頑張ってくれるだろうか。線香が消えた後も、そうした花の香に誘われて、父の魂が安らぐといいのだが。