夏越の大祓

文庫版の再校正に赤を入れたものを新潮社に届けた。大きな荷物を降ろして、ほっと一息。文庫には写真も入れいているので、かなり読みやすい印象を与えるはずだ。不思議な心地よさとともに、外に出た。

あまりの眩しさに、思わずサングラスをかけた。だが、強風のせいだろうか。日陰だと妙に涼しい。日傘姿の女性が目立った。これだけ風があれば、傘をさすだけでも熱中症を防げるのではないだろうか。

そんなことを考えながら神楽坂を下ってきたら、「夏越の大祓」の文字。そうだ。今日は6月30日。思わず、赤城神社の鳥居をくぐった。

儀式は11時に終わっていたが、賽銭箱の手前に茅の輪が設けられていた。八の字にまわって厄を落としてから手を合わせた。文庫版『ワシントンハイツ』が出版されることを感謝しつつ、多くの人々に読まれるように、と。

 年に2回、ちゃんと大祓ができたら、どんなにいいだろう。東京の神社で「茅の輪くぐり」ができる神社も限られているが、私自身もつい忙しさにかまけて6月末を忘れてしまう。神楽坂を下ってこなければ、今年も上半期の厄落としできずに終わったかもしれない。

 それから国会図書館に向かった。提出したものの、念のため事実関係をいくつか確認をするためだ。現代史ノンフィクションを書くのは、こうした果てしない作業の連続である。