最近の冷蔵庫事情

突然、冷蔵庫が壊れて右往左往。見れば欲しくなるからと、13年間、店頭で見るのを避けてきた私は、異文化圏に身をおいたに等しかった。同じ経験を持たれた方がいらしたらお役に立てるかもしれない。現段階での冷蔵庫事情を記そうと思うが、長いので、ご覚悟を。

冷蔵庫の新作が出るのは秋と決まっているらしい。店頭では9月ころから型落ちが値下がりを始めるので、納得のいくものを選ぶなら、在庫が残る、いまがチャンスである。

冷蔵庫だけは大きめを買うべきだと思う。ある友人は、子どもが独立したからと小さめを勧められたが、結局、年末におせち料理を作る際には、小さすぎて後悔していると語っていた。私が大型にこだわるのは、夏の間、調味料と化粧品を入れるためである。海外取材で家を一週間も空けたら最後、我が家は蒸し風呂と化す。だから、春夏はあらゆるものの冷蔵庫収納が「マスト」で「ベスト」なのである。

この数年、日本のメーカーは庫内を広くすることに心を砕いてきた。同じ幅でも、13年前の440リットルが520リットルへとキャパが広がっている。しかも、限りなく壁に近づけても熱がこもることもない。置き場が決まっているキッチンなら、許す限り大きいものを選んだほうが賢明とみた。隙間を作っても無駄になるだけである。電気代も安くなったので、冷暗所保存を謡う食材棚として使えばいい。

あとは、帯に短し、襷に長し。節電技術も除菌機能も冷凍技術も、決定的な違いはない。自分のライフスタイルで判断するしかないだろう。

最後まで候補に残ったのは、日立だった。「真空チルド」機能に惹かれた。刺身や食べかけのものを入れても、低酸素で鮮度を保てるからだ。ハムも塊だと簡単には減らないが、ここに入れれば味が落ちないらしい。気圧が低いので、浅漬けなど、急いで味をしみこませたいときに力を発揮する。毎日、手の込んだ料理を作る主婦にはいい。しかし、1歳の子どもがいる従妹は、使いこなしきれていないという。チルドか氷温の切り替えが必要で、上手にやらないと、ほかの温度が変わってしまう難しさがあるらしい。

とはいえ、彼女が使っている600リットルクラスの大型はかなり魅力的だ。クリスタルドアで、見た目が家具のように美しい上、下の2段がボタンひとつで開く電動式。重い引き出しを手で開けなくていい。幅685ミリサイズにこの機能がついていたら、私は迷わずコレを選んだ。

総合的には三菱がよいと思う。働く主婦にはメリットが多い。「瞬冷凍」熱いままの食品をセンサーで検知して一気に味を壊さず冷凍可能。熱いご飯も水分を飛ばさずに冷凍できるという。マイナス7℃という絶妙な温度で冷凍した肉を包丁で切ることができるのが嬉しい。あとは中の棚のレイアウトを変えられるのも売りだが、万人に必要な機能かどうかは別だ。

東芝は「べジータ」と名づけただけあって、野菜重視。野菜鮮度を保つための「ピコイオン除菌」で、鮮度劣化の原因となるエチレンガスの分解にビタミンを逃さないのが特徴だ。レイアウト的には真ん中に野菜室がある6ドアには魅力を感じないが、上段と中段が一体化した5タイプにはそそられた。冷凍室以外を一気に見渡して、献立を考えることが可能だ。

一番おしゃれなのは、やはりパナソニックだ。ナノイー機能が冷凍技術や鮮度保持に役割を発揮し、デザインと使い勝手は十分に魅力的ではある。ただ、観音開きのドアの左右の比率が極端に右扉が大きすぎるのが我が家にはマイナス要因となった。

結局、私がシャープを選んだのは、プラズマクラスターによる除菌・脱臭、製氷技術が優れていたからである。冷凍などで細々機能がついていても、使いこなせなければ意味がない。それに、観音扉の開閉が一番スムーズだったのも決め手となった。実際、使ってみると、匂いはつかず、「透明な氷」がおいしい。LEDライトのキラキラも、開けるだけで楽しくなる。

実は、もうひとつ考慮したポイントは、コンプレッサーだった。今回の壊れた原因がそこにあったからだ。ある店頭では、日立とシャープを店員が絶賛していた。東芝は中国製だとも教えてくれた。メーカーに問い合わせると、日立は情報公開していないと言われ、それが疑惑を生んだ。タイ洪水のニュースを見ていると、日立もタイあたりで作っているような気配である。シャープの場合、ブラジル製を使っていると正直に伝えたのも気に入った。

おしなべて大型冷蔵庫は日本で組み立てられているが、小型は組み立てもアジアが大半なので、そこは調べたほうがいいだろう。

この秋の新作も、大きな機能のチェンジはない。10年以上使っている人は、お正月前に一度、店頭で見ておくことをお勧めする。なにせ「ジ・エンド」は突然やってくるのだから。