ワシントン素描 2004

アフガン攻撃以来、ブッシュ政権への批判を繰り返し、一部の視聴者からお叱りを受けてきた私ですが、一度は「ワシントン」の目線とメンタリティを知って発言したいと考え、ジョージタウン大学外交研究フェローとして昨年夏からワシントンに来ております。

アパートの近くにあるネオコンの牙城PNACを訪ねていけばやはり議論がかみ合わず、講演にやってきたウォルフォウィッツ国防副長官が自分がイスラームの理解者であると強調するのに抵抗を覚える一方で、大学のプロジェクトで一緒になったオルブライト女史のバランスのとれた考えに救われ、日本で想像するよりはるかに多くの米国人が平常心を取り戻しているのを知って安心したのも事実です。

情報の宝庫「ワシントン」で、旧東欧・ソ連、アジア諸国を歩いた私がどの角度でその集大成を書き上げられるのか正念場ですが、折しも今年は大統領選の年。民主党はケリー旋風で注目を集めながらも、しかし資金が豊富で悪運の強く、支持層の厚いブッシュには簡単には勝てないだろうとの予想しつつ、極右と極左に大きく揺れる米国の人々の選択も貪欲に観察して帰るつもりです。

ワシントンには地球の縮図。私が出向かなくても世界中から人々がやってきます。ここでは、アングロサクソン的思考を批判するだけでなく、日本がどうあるべきか、他国と相対化する作業を通して考えていきます。

3月に父が他界しました。私生活に吹き荒れたそんな出来事が故に、ワシントンの報告が遅れましたことを、この場を借りてお詫び申し上げます。

2004年3月 秋尾沙戸子