東電株主総会

生まれて初めて株主総会に出た。27日に開かれた東京電力のそれに、である。 

たとえ100株でも、持っていれば立派な株主。株主提案の資格はなくとも、総会に出る権利は与えられる。それが狙いで暴落しても保有してきたのだが、昨年は『ワシントンハイツ』文庫版の加筆に出席できず、今年は新刊のため、前半のみの出席となった。戦争・占領ものを書いていると、このタイミングは自転車操業状態。再校正が終わっても、扉の写真集めとキャプションチェックが待っているからだ。今回は個人の評伝なので、私でないと写真の内容がわからない。脱稿してからも著者の作業は続くのだ。 

さて、株主総会。猪瀬東京都副知事の発言と、実質国有化が可決されたという結果のみが報じられた。何を持って可決というの。東電提案と株主提案、それぞれ可決も否決も、会場の挙手を数えることさえない。2階席からだと賛否半々に見えた。しかし、常に東電の思惑通りに可否決される。アリーナには、完全にサクラと思える東電仕込みのグループがいて、怒号のような声とともに手をあげ、東電寄りの空気を作るのに一役買う。原発導入時に地元の反対集会を煙にまいてきたノウハウが生かされているのだろう。他方、出席していない株主の中には、事前に議決権を行使して書類を提出しているはず。だが、各議案に対して賛否何人いたかも発表されていない。事前の提出は何の意味も持たない。

なにより、議長のカツマタ会長がタヌキなのである。耳だけで聞いていると、老練な弁護士のような語り口で、年老いた声でゆっくりと仕切り、のらりくらりとかわしていく。「東電はカツマタ王国」で、清水前社長も彼の人形だったといわれているが、どうしてどうして、このタヌキぶりを見ただけで、カツマタ会長存命のうちは、東電の改革は不可能だと思えてきた。 

それでも、猪瀬さんの投じた一石は大きい。大株主が発言すればマスコミが注目するのだから、原発反対派は、株価を下げているうちに株を買って、株主の権利を行使しつつ、異議を申したてていくのが賢明と私は考える。