母を訪ねて膝栗毛

昨夜より、ようやく食欲が出てきました。木曜日午後に「いきなり」発熱。悪寒、頭痛、眩暈、扁桃腺の腫れ。暑いか寒いかわからず、文章も書けず、ネット検索さえ出来ず、朦朧としたまま翌朝、主治医のところへ。2日にわたる点滴を経て、大阪松竹劇場へ。「母を訪ねて膝栗毛」を観るためです。

病をおしてまで出向いたのは、奥田瑛二さんと坂東巳之助さんが出演されているから。役者さんに取って頂いたゴールド席を空けるのは失礼なので、這ってでも劇場に向かうつもりでした。春の新橋演舞場を見そびれ、大阪公演を狙ったものの、座長の藤山直美さん人気は、大阪では絶大で、チケットを手に入れるのは容易ではなかったのでした。

テレビのバラエティ番組を面白いと感じない私も、中村勘三郎さんの歌舞伎では随分笑わせてもらっていました。最近、笑っていないなあと思っていた矢先ーー。

体調不良で反応鈍いながら、笑いました。幼いころ、祖母に御園座で見せてもらった藤山寛美の強烈さには及ばないけれど、喜劇、新派、歌舞伎からの豪華キャストによる、アドリブ・オン・パレードは、ごった煮風ながら、満腹感がありました。新橋演舞場のときとはアドリブの質も違ってきているはず、と思って奥田さんに確認したら、「全然違う。自分にエネルギーがないと負けてしまう」とのこと。いつか、その違いについてじっくり訊いてみたいものです。

中村獅童さんも先輩と共演する歌舞伎と違って自由で伸びやかで、花道から出てくる奥田瑛二さんの侍姿も美しく、今後は役者として時代劇もありと思ったほど。にわか練習の殺陣も様になっていて、しかし息を切らしたのも事実。その言い訳アドリブも会場では受けていました。

坂東巳之助さんは私の周囲にいらしたお姉さま方に評判で「銀二役は誰?」「面白かったね」と騒いでいるので、「三津五郎さんの息子さんです」と思わず教えてしまった私です。最近、踊りも上手になったし、個性ではお父さまより鮮明で弾けるかも。必殺仕事人のようなキャラが立つ時代劇もいけそうな勢いでした。

辛かったのは水谷八重子さん、その日は調子悪かったのかなあ。太られて、動きも鈍い。舞台女優は、玉三郎さんのように、ストイックに体型管理しないと駄目な気がする。

知り合いが出演していなかったら見過ごしたであろう舞台。エンターテインメントとして楽しめました。少し元気が出てきて、でも、いい気になって動き回ると、ぶり返しそうで、東京への予定は諦め、渡航準備に専念した日曜日でした。