銀行から茶室が消えた日

かつて銀行の幹部だった方から、興味深い話を聞いた。ある時期まで、どこの銀行でも支店には必ず茶室があったというのである。社員教育の一環だったのであろう。男性行員は茶室でお茶を点て、女性は華道のお稽古をしていた。帰りには、花材を筒のようにまとめて銀行から持ち帰る姿が当たり前だったのだという。

 だとすれば、茶室はいつその姿を消したのだろう。戦後、日本の住宅から畳が消えたことはGHQによるアメリカ化政策と無関係ではないが、銀行などの企業にまで、その影響が及んだということだろうか。あるいは行内の左翼グループが働きかけたのだろうか。

銀行が茶室を無用のものとした時期は、多くの日本人が日本的なるものから目をそらし、腑抜けになる第2の転換点だったかもしれない。

その時期がいつで、その理由が何なのか。調べる価値がありそうだ。