アバクロ銀座店

「可愛いですね、その服。アバクロですか」
サンフランシスコで購入したオレンジ色の綿ニットJKを着ていると、東京でよく声をかけられる。どうやら胸の刺繍のマークでアバクロと判別できるらしい。
偶然、ホテルの前にアバクロのショップがあったために中に入り、一枚買って帰った私だったが、思いのほか評判がいいので、これならピンクも購入してしまおうと、銀座の店を訪れた。
入るなり、男性ヌードの写真。ワイドショーのレポート通りだ。イケメンの男たちがエレベータに誘う。店全体があたかもクラブのようにビートが鳴り響く。
エレベータは7階だけで止まる。上は女性、下は男性ものと分けているらしい。狭い敷地に建てたのだから、そういう構造になっているのだろう。
その小さな面積のわりには、各フロアに店員が多い。ハーフの坊やたちばかりで、英語で話しかけそうになる。彼らはモデルクラブに属しているのだそうだ。オーストラリアとのハーフという青年に尋ねると、入って1ヶ月なので、マネージャーに聞いてみるという。
だったら、自分で見てみようと階段を昇ってみた。結果、日本には入っていないことがわかった。商品の説明にも時間を要した。ショート丈でジップアップの綿ニット。いくら説明しても、見たことがないのだから、通じないわけだ。着てくれば、話は半分で済んだのだろうが、朝晴れていたので、つい洗ってしまった。
それにしても、このブランディングは見事だ。サンフランシスコの店とは大違い。あちらは「H&M」や「フォーエバー21」と変わらないカジュアルな雰囲気なのに、この仰々しいこと。一歩足を踏み入れた途端に、視聴覚ともにクラブの様相を呈している。COACHも最初に日本に上陸したときは高級感があったのだが、アメリカではMACYSあたりで安価に売っていることを考えると、ブランディングの仕方ひとつで日本の消費者が大枚をはたいていることに驚く。
銀座線の外苑前で降り、青山の「フィアット・カフェ」に寄った。教授の還暦のお祝いをここで開こうと考えているからだ。赤の内装が還暦にぴったり。
打ち合わせの後、店のスタッフにアバクロ話をしたところ、さすが若者。銀座の店はNY五番街の店と同じコンセプトだと教えてくれた。なるほど。NYのトライベッカあたりでも面白い店作りをしていそうなものだが、まあ、次回はNYの店をチェックしてみよう。