6月6日 フランスとの手打ち式

「Dデイ60周年式典」の模様が夜明けから中継されている。アメリカとフランスが共に戦った日々をなぞりつつ、ブッシュはシラクとイラクについて話す機会を得て、この後、サミットでさらに進展する可能性が出てきた。シラクにとっても、この式典はアメリカと歩み寄る、わかりやすいきっかけとなるのだろう。

それだけでも運がいいのに、昨日は元大統領レーガンが亡くなって、レーガン+共和党の功績をたたえ、共和党万歳モードである。あの「楽観主義」が良かったと語るコメンテーターたちばかり。これを現大統領ブッシュが自分にどう引きつけて語っていけるか。先輩の遺産をどう生かせるか。彼の腕の見せ所である。

80年というと、時代の空気が全く違う。大統領選挙から25年が経ったのだとしみじみ思った。一連の追悼番組は、共和党支配の良き時代を振り返る好機となった。彼のラジオアナウンサーとしてのしゃべりのうまさは、スピーチによく生かされている。彼の笑顔や愛想の良さも愛された理由のひとつだろう。ブッシュ親子には、そのいずれもない。特に息子はその才能に欠ける。しかし、根暗かといえばさにあらず。適度に楽観主義的ムードが漂うところが、ノーテンキなブッシュ支持につながっているのだろう。しかし、本人が楽観主義なだけでは危うくて仕方がない。そこを、アメリカ国民がどのくらい自覚しているかが問題である。

スピーチのうまさで負けていないのがクリントンだ。もうすぐ自伝が出る彼は、先取り宣伝講演ツアーをはじめ、これがケリーにマイナスに思えてならない。クリントンが輝けば輝くほど(その模様はC―SPANで放送されるので)ケリーがしぼんで見えるからだ。

実は多くの民主党員はケリーに満足していない。しかし、民主主義の手続きを踏んだ結果に誰も文句はいえないのだ。かくなる上はケリーを党をあげて応援しよう。決まったことに対する腹のくくり方において、アメリカ人は立派と思えることが多々ある。

 昨日電話で話した友達によれば日本ではケリー候補が勝てるという空気があるらしいが、私はブッシュが勝つと思う。在米日本人はほとんどそう考えている。ケリー候補になっても事は同じで、東アジア無関心という分だけ、日本には不利だという説が大半だ。

大統領ブッシュが閣僚人事を大幅に変えれば何か望みも持てそうだが、調べれば調べるほど彼は副大統領チェイニーに頭が上がらないことがわかってきた。6月末に政権移譲が行われ、イラク統治にアメリカ独裁の匂いが薄まれば、共和党はこの危機を乗り切れる。あとはレーガンの思い出をどう上手に散りばめるか、スピーチライターと大統領のスピーチのスキルにかかっているが、ブッシュの場合、実はこれが問題なのである。

それにしても、「Dデイ60周年」とはいいタイミングがあったものだ。この日に米仏が手打ちというシナリオは、ずっと前に描かれていたに違いない。