4月14日 日本人・人質事件2

 父の七七日の法要のために日本に帰る途中、飛行機の中で新聞を読んだ。やはり人質に風当たりが強いらしい。家族の家に嫌がらせのファックスや電話が届いていると言う。だが、ここまで大きくなびくのも珍しい。柳田さんの時はもう少し同情的だったように思うが。

夕方に成田に着いたので、夜遅く、友人と食事をした。父の仏壇に線香をあげに行くつもりだったが、姪が4月から私立の小学校に通い始め、朝が早いので金曜日の夜になったためだ。

―――ねえ、なぜ家族にこんなに風当たりが強いの?

「いやあ、弟とか妹とか出てきてさ、はっきり言えば、いい気になっていたわけ。自衛隊を撤退させろとか叫んだり、うーん、ちょっと英雄気取りなんだよな」

 どうやら世間の批判的なまなざしは、3人に対してではなく、弟や妹たちにあるらしい。

 飛行機に乗る前、NYに住む日本人の友だちからメールを受け取った。彼女は職場で日本の新聞を回し読みしている。

「日本の新聞を見ていると、一面から人質事件で持ちきりなのに、こちらでは、事件が発覚した翌日に記事が出ましたが、それ以降は、一切取り上げていません。日本という同盟国の位置づけの反映であるとも思えるし、それとも、毎日のように兵士を殺されているアメリカにとって、こんな事件は重みが無いのか、解釈に困っています」

―――うーん、日本の取り上げ方が過剰なのかもしれない・・・。

 会議などでテレビと隔離される彼女と違い、テレビをつけながらペーパーを書いていた私には、十分に取り上げられているように思えた。もちろん、日本のように第一報がテロップで入るというような一大事という扱いではないけれど。日本でもニュースになった頃、こちらはライスの公聴会を中継の最中だったし、テレビ局としては、ライスの件でゲストコメンテーターのブッキングをしていたはずだから、日本の人質事件は後回しなのは仕方がない。しかし、その前に韓国人牧師が数名拘束されていたことに比べれば、翌日からはよく取り上げているし、映像も流されている。

たしかに同盟国日本が特別扱いされているとは言いがたい。同盟国にも被害が及んでいるのに、どうするブッシュ政権?という口調ではある。中国なども被害にあっているので、その他大勢にされている、と言ってしまえばそれまでだ。協力してくれた国だから特別扱いするという意味では、韓国だってもっと騒がれるべきだった。しかし、ネットで見るまで私も知らなかったくらいの取り上げられ方である。

フィリピンで調査中の友達によれば、CNNでの第一報は、「日本人観光客が・・・」と言っていたらしい。「日本人といえば観光客程度という認識しかないのだろうね」と書いて来ていた。

 もっとも、アメリカ人が殺されてつるし上げられている写真が一面に載ったのに比べれば、同盟国の人質騒ぎは深刻度が全く違うのはやむをえないのではないか。

 日本だって、たとえば先に自衛隊の誰かが命を落とす事態が先に起きていたら、人質事件にこれだけの紙面は割かなかったかもしれない。おそらく、今回は拉致家族の人たちの経験則から、同じ温度で報道陣が動きだしたに違いない。これはメディアの癖(へき)としか言いようが無い。会見に応じた弟や妹たちも、拉致被害者の人たちのこれまでの報じられ方が頭の中で瞬時にシミュレーションされてしまったのではないか。だから、どんどん加速度ついて過熱気味になった。同時進行で追っていないけれど、なんとなくそんな予感がした。