無言詣

御旅所四条通の御旅所に七夜お参りすると、願い事がかなうという。あるいは、一晩に四条大橋から七回半の往復という説もある。川端康成の『古都』で描かれているのは後者の形。双子の姉妹がそれぞれ無言参りをしているところに遭遇する。

いずれの場合も、条件は誰とも口をきかないこと。これが難しい。舞妓さんなら、路上でお客さんに声をかけられてしまう。土地に知り合いの少ない私でも、マンションの入り口で誰かに会えば、やり直しなのだからドキドキだ。入るときに周りを見渡し、誰もいないとわかるとエレベータ前へ走る。幸い、中がカメラで見えるので、誰も乗っていなければ急いで上がる。誰かいれば、外にまわり、階段をかけあがらねばならない。なんだか隠し事をしているようで、不思議な感覚に陥る。