みかわ是山居、初体験

生きている間に、ここに来られてよかった。そんな夜だった。
歳を重ねると、そうは感動することに出会えないものだが、「すきやばし次郎」のとき同様、「みかわ是山居」を体験すると、人生観が変わる。ここにくれば、誰もが謙虚になるのではないだろうか。
山本益弘さんのおかげで、昨夜は「みかわ是山居」のカウンターに座らせていただいた。早乙女哲哉氏の仕事は実に奥が深い。
いかに水を抜くか。魚を知り尽くし、科学的に計算した上で、粉と水と空気の割合や揚げるタイミングを決めているらしい。車海老を扱う指の美しさ、白魚を一匹ずつ揚げる手首のしなやかさ、とにかくセクシーなのである。
かくも甘い車海老にこれまで出会ったことがない。胴体と頭が全く違う。名古屋生まれで海老好きの私が口にしてきたものは、何だったのだろうか。きす、いか、うに大葉、しらうお、めごち、穴子、アスパラガス、ふきのとう、サツマイモ、はしらのかきあげ。薄い衣、香ばしい衣、どれもこれも、魚のベストを衣の封じ込めてなお、衣そのものの魅力的なことよ。なんとも至福の瞬間・・・。
早乙女哲哉氏が日本に存在してくれたことを、私は日本人として誇りに思う。