非力を認め、素直に謙虚に迅速に

世の中には、能力もないのに自分でやれると突っ張る人がいる。人が助けてくれるというのに、その申し出を受けない人がいる。結果、災いが降りかかるのが個人だけなら構わないが、多くの人を巻き添えにするなら、きわめて重罪である。 

米軍からもフランスの原発企業アレバからも、日本政府への申し出は震災直後からあった。彼らには原発事故のノウハウは十分にあったのに、何故それを受けなかったのか。少なくとも米軍駐留には長く日本国民の血税が投じられてきたのだから、災害時に米軍の力を借りるのは筋が通る。 

今回の原発事故が東京電力の人災であることは間違いない。廃炉にする損害に耐えられず、かつ自分たちで大丈夫と小手先の修復で乗り切ろうとした経営者が日本国民に及ぼした罪は償いようもない。しかし、震災後すぐに非常事態宣言を出せば、総理権限でそうした企業の論理をも封じ込めることは出来たはずだ。

 理解できないのは、原発反対の議員も多いはずの民主党が何故、政権をとってすぐに原発の安全性のチェックをしなかったかである。社民党は何もアクションを起こさなかったのか。少なくとも共産党の『赤旗』紙面では原発の危険性を昨年訴えていた。同じく野党だった民主も社民も意識はあったはずなのだ。

 せっかく政権与党になったのに、子ども手当てよりずっと重い問題だったのに、なぜ議員たちの目線は原発に向けられなかったのか。むしろ政治主導にこだわって仕分けパフォーマンスを行い、危機管理予算を削ったのは民主党政権である。

総理には自らの非力を素直に認めていただきたい。日米合同の捜索だって、震災直後に行われていれば、助かった人々もいたかもしれないのだ。とにかく謙虚に、迅速に、各国の援助を受け入れ、同時に、復興のビジョンを示さない限り、被災した人々は救われないではないか。

くわえて、各電力会社に、原発の安全性をチェックさせるように指導すること。日本全体が弱っているときにテロや地震が来たとしても同じ過ちを繰り返さぬ体制を整える以外に、現政権の罪を償う方法はないのだから。