共同通信より配信2010年3月7日付地方紙掲載

特定の誰かを設定して「読んでくれますか?」と本を推薦する共同通信のシリーズ企画

【民主党議員へ】【中国人の思考回路見抜く】【三国志】

「僕たちチャイニーズが日本人をだますのなんて、赤子の手をひねるより簡単だよ。単純だから」。台湾の友人たちによくこう言われる。

彼らは小学校に上がる前すでに『三国志』を諳んじている。単なる音に過ぎなかった言葉は、大人になると意味を持ち、貴重な人生教訓に変わる。食うか食われるか。中華社会での駆け引きに大いに役立っているという。

二-三紀頃の中国は、漢が滅び、魏・呉・蜀への戦国時代。『三国志』はその乱世を生き抜いた英雄たちの処世術が詰まった物語である。

それを熟知しているのは大陸の中国人も同じだ。共産党幹部はもちろん、日本の観光地や繁華街に群がる若者にも、東京のマンションを買いあさる投資家にも、権謀術数がその細胞に浸透している。

東京で宝石を商うアフガン人が言う。「中国人は一筋縄ではいかないが、パタンがわかれば大胆で面白い」

米中首脳会議では、オバマ大統領もヒラリー国務長官も、孟子や孔子を引用して二国間の将来に準えたという。相手の癖(へき)を知らねば戦略は立てられない。あの米国でさえ努力している。

果たしてわが国政権与党の民主党議員らはどうか。小沢幹事長に従い胡錦涛主席と握手したくらいで有頂天になっている場合ではない。その無邪気な姿を見て、彼らが鼻先で笑っていることに気づいているのだろうか。

民主党議員には『三国志』を座右の書にして頂きたい。一度は読んだなどと言うことなかれ。共産党の権力闘争を勝ち抜いた彼らと付き合うには、一言一句、いまから暗記しても追いつかない。

まずは吉川英治氏の小説から始め、伊波律子氏による翻訳本へと進めばいい。中国人の思考回路を見抜く頭脳を鍛えることこそ、日本の安全保障につながると私は考えている。