エネルギーシフトを国策で

 震災(そして原発事故)は、転じて日本が全く新しい価値体系を持った国に生まれ変わる千載一遇のチャンスだった。自然と共生しながら、経済活動を行える社会を、皆が一丸となって創り出せたはずだった。 

どうやら大半の人々はそれに気づかず、20世紀型社会へと戻ろうとしている。中部電力の英断について、日本経済が駄目になるという切り口で伝えるマスコミの論調が、それを物語っている。 

昨日から紀伊水道や和歌山北部、山梨西部での地震が続いていることに注目したい。アメリカではミズーリの氾濫で、大勢の人々が命を落としている。東北の震災は始まりにすぎず、今後、日本各地、世界各地で、大災害が起きそうな気配だ。ここ数日の地震は、それを暗示している。

  中部電力の本音はどこにあろうとも、原発停止を決断したことが大正解だったと、後に評価されるに違いない。菅総理だって、同じことだ。経済より、いのちを優先した総理、経営者であったと歴史に名を刻むことだろう。

 一刻も早くそのことを認識して、政府は国策で自然エネルギーにシフトしてほしい。浜岡で太陽エネルギーの開発に取り組めば、2年後には中部電力の株が上がるということがイメージできないのが残念だ。福島も浜岡も、せっかく海に近いのだから、海藻を中心としたバイオマスの開発に適した場所なのだが。 

他方、メーカーなどの企業はすでに、そちらに動き始めている。蓄電池開発などへの新しい取り組みが報道されるたび、日本企業の底力に頭が下がる。政府を頼らず、自家発電などで独自の方法で切り抜けるであろう企業に対し、新しいエネルギーを供給することこそ、政府の役割である。

浜岡原発停止、「はじめの一歩」

「横須賀に米軍基地があって、良かったね」 

友人との会話である。総理を動かしたのが皮肉にも米軍だとすれば、私たちはその幸運を喜ばねばならないが、いかなる理由があろうとも、浜岡原発停止を決めた菅総理の英断は歓迎しよう。未曾有の震災の後、これで日本が新たな一歩を踏み出すことになるからだ。この勢いで太陽エネルギーへとシフトできるかどうかは、国民の声の大きさにかかっている。

 「次は”もんじゅ”。止めてほしいね、トラブルが続いているし。でも、福井県周辺には米軍基地がないし、どうしようか」

「だいたい誰が活断層の上に作ろうって言い出したんだろうね。浜岡なんて、どう見ても危ないのに」

このところの私は 原発が導入された経緯を図書館に通いながら文書をたどって調べている。当時の国際的な原発フィーバーを知れば知るほど、資源のない日本が原発に飛びつくことは誰にも止められなかったように思える。情報の少なかった時代、「放射能も癌も10年もすれば、薬がみつかる」などと言われれば、地元の人々も「そうかな」と思ったに違いない。もっといえば、鉄腕アトムのような賢いロボットが開発されて、壊れたときも修理してくれるだろうと発想してもおかしくない、そんな時代の勢いがあった。

 最初に東海村を選んだのは、原発導入に前のめりだった正力松太郎である。初期には誘致に国会議員がからむことは少なくなかったが、しかし浜岡原発については、中部電力が独自で動いたようだ。三重県の候補地が反対運動で行き詰まり、他社より出遅れた形で静岡県を選んでいる。

 そもそも誘致には過疎地が狙われやすい。原発建設が始まれば、農家は労働者のために民宿を始め、漁民には補償金が支払われる。電力会社は道路や公共施設を作ってくれるし、社宅用に土地を購入してくれる。地元には雇用がうまれ、民宿も店も賑わい、原発バブルが沸き起こる。地元議員には祝い金も支払われ、自治体は補助金で潤う。沖縄の米軍基地をめぐる問題と構図が似ている。原発建設が終われば、潮が引いたように静かになり、バブル景気が恋しくなる。企業はそこを狙う。そして、もう一基ーー。麻薬のようなものだ。

 それを止めるとすれば、今回のような天変地異しかない。これほど酷い目にあったのだから、思い切って太陽エネルギーにシフトしても、国際社会から文句は言われまい。さすがに「全廃」と言えば総理が原発推進派から刺されることもあるやもしれぬが、3基くらい止めたところで、命の危険はないはずなのだ。

政権が交代してもなお、米軍の指示待ち総理しか持てぬ日本に進化はないのだろうか。私たちが180度生き方を変えない限り、津波に呑み込まれた人々の無念ははらせぬというのに、どうしたものか。

減給は東電だけ?

東電の役員報酬が半減でいいかと聞かれれば、不十分な減給だと答える。少なくとも会長と社長と副社長は、今年だけでも無報酬にすべきである。

 同時に、経済産業省の保安院、内閣府の安全委員会のメンバーも、経済産業大臣も無報酬でなければならない。もっと言えば、過去10年間遡って、短くともその座についた歴代経産大臣と、経産官僚のうち原発関係者も一律に減給されるべきだと私は思う。

 すぐに電気料金値上げを叫ぶのも間違いである。まずは原発推進のための法外な予算を、すべて賠償にあてることが先決だ。もっとも、その中には広告費も含まれているから、この考えには大メディアは乗って来ないと思うのだが。

太陽エネルギーは東北発で

この場に及んでもまだ、原発推進という人が多くて、びっくりする。

 震災以降、恐怖心でいっぱいになったのは、これが地球から人類へのメッセージだと私が考えているからだ。だとすれば、これを機に日本が最初に太陽エネルギーにシフトすべきである。そうでなければ、津波にさらわれた人々の無念をはらすことにならない。

 東北の復興は、新しいエネルギーの発信以外に考えられない。原発はこれ以上増やさず、自然エネルギーを使った街づくりを考えるべきである。なかでも私が関心を抱いているのは、バイオマスだ。津波被害にあった地域は、東北でも日照時間が長く、海藻が豊富に獲れる。その海藻を使ってオイルを作るのである。

 海藻に太陽を当てると、ものすごい勢いで増える。いわゆる光合成である。そこに悪者と言われている二酸化酸素CO2をどんどん送り込むと、結果、オイルを精製できる。そもそも石油は、それが化石になったものだと考えれば、わかりやすい。

 原発一基分を補うのに、バイオマスがどれほど必要かまだ掴んでいないが、少なくとも政府は即、バイオマスに舵を切り、原発に替わるエネルギーを国策として開発すべきである。

 日本人のすばらしさは、鎮守の森にある。自然を畏れ、感謝を知っていることに集約される。戦後65年、世界潮流に乗り遅れまいとひた走ってきたが、被災したいまこそ日本が新しい社会のありようを提示して、世界をリードすべきなのである。金儲けの亡者は別として、心ある人々は、被災した日本がどう立ち居振舞うのか注目しているのだ。日本人の美徳とは、自然に対して謙虚になることであり、自然に感謝することであると私は考えている。

福島のお酒、試飲即売会

本日11:00~16:00、「被災者応援フェア『マルシェ』」と題して、
東京国際フォーラム1F広場にて、福島県産酒の試飲即売会があります。

間に合わない方は、販売終了後の17:00~20:00、お酒の会もあるとのこと。会場は東京国際フォーラムB1「宝」です(03-5223-9888)。

末廣のHPも覗いてみてくださいね→http://www.sake-suehiro.jp/top.html

子どものためには厳しい基準で

最近考えるのだが、科学者も占い師も宗教家も、つまるところ似ているのではないだろうか。いずれの説にも絶対はない。誰の説を信じるかは自己責任である。 

原発事故以降、放射能について、色々な科学者の意見を聞いてきた。安全なのか危険なのか。人によって考えは違う。チェルノブイリ以外、何ひとつ実証できるデータはないのである。 

だから、政府の判断も絶対ではない。どの科学者の説を選ぶかで違ってくるからだ。内閣参謀参与でありながら、自分の説が採用されず、先日、辞任した小佐古敏荘東京大学教授の行動は納得がいく。文科省は校庭利用の放射線被曝限度を年間20ミリ・シーベルトとし、教授の4倍もあまく設定しているからだ。将来、子どもたちが発ガンしたときに、誰が責任をとるのか。科学者の良心として、辞任という形で政府に抗議したことを重く受け止めたい。

私たち大人が放射能対策をどうするかなどは自己責任でいい。しかし、未来ある子どものためには、厳しいデータを採用して、最悪事態を避ける策が優先されるべきである。次世代を育てることこそが時の政権の役割というものだ。

いのちを守る「緑の堤防」2

宮脇昭先生の「緑の堤防」構想について、もう少し補足したい。

先生によれば、海岸沿いに森を作る際、瓦礫を入れて盛り土を作ることが可能なのだという。瓦礫さえも土の中で自然に帰るというのである。実際ドイツでは世界大戦のときの戦車を土の中にいれて植樹された森が存在するのだそうだ。

報道は原発と被災者に集中しているが、実際、現地では産廃業者が多く入り、それ自体、ビジネスとして激しい競争が展開されているという。さらには、復興景気を狙って、ゼネコンを中心とした業者が乗り入れ始めていることは想像に難くない。

宮脇先生の植樹構想は、経費がかからないのである。裏を返せば、どの業者も儲からない。だから、盛り上がらないのが実情だ。

経済復興も大切だが、瓦礫さえも呑み込んで森を作るという、未来型の発想に「はじめの一歩」を踏み出すことのほうが、国際社会で尊敬されるメッセージであるにもかかわらず、その一歩が踏み出せない日本政府が情けない。

いのちを守る「緑の堤防」 東北から世界へ

「サンデーフロントライン」で復興策を提言したが、時間が限られ、コメントは短くというのが原則なので、ブログで補いたい。 

「緑の堤防」構想は、世界で4万本の植樹を指導してきた横浜国立大学名誉教授の宮脇昭先生が提唱されている。宮脇氏は鎮守の森の価値を説かれている生態学の専門家だ。政府はぜひ、宮脇先生と組んで、これを実行に移して欲しいと私は考えている。国民の多くが賛同し、政府を動かせることが理想だ。

今回の震災で私たちは津波の本当の恐ろしさを知った。コンクリートの堤防だと跳ね返され、かえって、その威力は倍増するのだ。しかし、「緑の堤防(=森)」を築けば、津波が木々の間を抜けるために威力は半減する。その間に人々は逃げる時間が稼げるし、水が引くときにも森に引っかかって、海にもっていかれない。今回、松が流されたのは、松は根が横に広がり、浅いからである。しかし、タブノキなら、砂地でも根がまっすぐに深く伸びるので波に負けない。三陸海岸に合った木を植えればいい。

なぜ政府か、といえば、これを「国民植樹プロジェクト」にする必要があるからだ。私自身は宮脇先生の指導される植樹祭に参加して、感動したことがある。先生の指導の下、必死で目の前の苗を植えていくうちに、知らない人たちとも不思議な連帯感が生まれ、涙が出るほど心を揺さぶられる。日本人がひとつになる好機になる。

なにより、植樹を通して被災した人々の心が癒される。木々が成長する過程を見て、自分も前に進もうと思える。子どもたちは、自分が苗を植えた森を誇りに思う。自信がつく。全国から集まった人々も、東北への愛着がわく。ずっと復興を応援しようと考える。

震災以来、東北は世界一有名な地域になった。植樹祭は間違いなく、世界中でニュースになる。美しい景観は将来、東北の観光資源になるのである。

息の長い復興のために、シンボルが必要だ。津波にも強い「緑の堤防」プロジェクトは、その役割を担うことができる。しかも、苗は数百円で済むのだから、コストが低いことも魅力のひとつだ。全国からの参加者が参加費を払えばいい。ただ義援金を送るよりも、ずっと付加価値が高くて達成感がある。財源など捻出せぬとも、国民を束ね、世界の注目を集め、政府の汚名挽回、支持率を上げる唯一のチャンスとなるはずである。

追伸:植樹祭について書いたコラムは→https://www.akiosatoko.com/wps/wp-content/uploads/2010/06/post05.jpg

東京に津波が来たら・・・@地下鉄

私は東京の津波を心配している。地下鉄は大丈夫だろうか。 

地震が起きると東京の地下鉄は自動的に止まる。携帯で地震警報が鳴っているときには、地下鉄はすでに止まってしまい、怖い思いをしたと友人が教えてくれた。それも、駅のホームではない。線路上に停まるのである。しかも、真っ暗。怖い。その間に、津波が来たら、どうなるうのだろう。 

水が入ってくる。駅ではないから、逃げられない。せめて駅まで移動してくれないと、電車から出られない。津波が来るまで30分。間に合わない。地上に出るだけでなく、ビルの4階まで駆け上がらねばならないのだ。どうすればいいか。

 今日、東京都庁に電話をしてみたのだが、津波対策には手をつけていない模様。港区は考え始めてはいるが、区民に知らせるには数ヶ月かかるという。次の仕事のために時間切れになったので、週明けにもう一度、都庁に大江戸線の対策について聞いてみるつもりだ。もちろん、営団地下鉄にも電話する。これを読んだ人にも電話してほしい。問い合わせ件数が多ければ、彼らも考えざるを得ない。

想定外と言われて泣くのは都民の私たち。自然をなめては駄目。謙虚になって万全を尽くしましょう。

エンジン01チャリティ@サントリーホール

ただ義援金を日赤に振り込むのも、違うような気がしていた。もう少し落ち着いたら、各市町村の口座に直接振り込みたいとは思っているが、もっと体力知力を使って、何かをしたいと考えていた。だから、エンジン01で何かを、と働きかけていた。

昨夜、サントリーホールで開かれたエンジン01のチャリティコンサート&バザーは、そんな会員の思いが形になったものである。私は音楽家ではないので、コンサートではなく、チャリティバザーに、サイン本販売と、「おむすび隊」に参加した(その写真は届いたらアップしますね)。山本マスヒロさんを中心とする「おむすび隊」は東北へも出動するので、詳細はまた書くことにしたい。

一口にチャリティといっても、裏では、手弁当で髪振り乱して泥臭い場面がたくさんある。そのプロセスが実は面白く、また達成感がある。次は、もっと具体的に、東北の人々に役立つソフトとともに、支援できればと考えている。